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「急に顔がカッと熱くなる」「理由もなくイライラしてしまう」「なんだか疲れやすくて、やる気が出ない」
もしかしたら、そのつらい症状は「更年期障害」かもしれません。
更年期は、多くの女性が経験する自然なライフステージの変化ですが、心や身体に現れるさまざまな不調は、日々の生活の質を大きく下げてしまうこともあります。
西洋医学のホルモン補充療法なども有効ですが、「できれば自然由来のもので対処したい」「たくさんの症状があって、何から手をつけていいかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな複雑で多様な更年期の不調に、きめ細やかな対応ができるのが「漢方薬」です。
漢方薬は、一つの症状をピンポイントで抑えるのではなく、不調の根本にある身体全体のバランスの乱れを整えることを得意としています。
この記事では、更年期障害の治療で中心的な役割を果たす「婦人科三大処方」(当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸)を中心に、ご自身の体質や症状に合った漢方薬の選び方を、薬剤師が分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたのつらい症状を和らげるための、最適な漢方薬を見つけるヒントがきっと見つかるはずです。
更年期障害とは?なぜ様々な不調が起こるの?

まずはじめに、なぜ更年期に多様な不調が現れるのか、その仕組みについて理解しておきましょう。
西洋医学から見た更年期障害
更年期とは、一般的に閉経を迎える50歳前後の約10年間を指す言葉です。
この時期、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が急激に減少します。エストロゲンは、妊娠や出産だけでなく、自律神経の働きを安定させたり、骨や血管の健康を保ったりと、女性の心身の健康に幅広く関わっています。
このエストロゲンが急激に減少することで、脳が混乱し、自律神経の調節がうまくいかなくなります。その結果、心と身体にさまざまな不調が現れるのです。これらの症状が日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」と呼びます。
更年期障害の症状は非常に多岐にわたりますが、主に以下のように分類されます。
- 血管運動神経症状: ほてり、のぼせ(ホットフラッシュ)、発汗、手足の冷えなど
- 精神神経症状: イライラ、不安感、抑うつ、不眠、意欲の低下など
- 運動器系症状: 肩こり、頭痛、腰痛、関節痛など
- その他の症状: 疲れやすさ、めまい、動悸、皮膚の乾燥、頻尿など
これらの症状は、検査をしても特に異常が見つからないことも多く、「不定愁訴」として扱われることも少なくありません。
西洋医学における更年期障害への対応は下記の通りです。
- ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)、発汗、不眠などが主な症状の場合
- ホルモン補充療法(HRT)を行う
- 不定愁訴(多彩な症状を訴える)場合
- 漢方療法などを用いる
- 生活習慣に問題がある場合
- 食事や運動など生活習慣の改善指導を行う(肥満女性における更年期症状の改善に有用であると示されている)
本記事では漢方療法を主題としますが、治療全体を考える際にはホルモン補充療法(HRT)を含む西洋医学的アプローチが重要であることも忘れないでください。
情報ソース:
産婦人科診療ガイドライン -婦人科外来編2023 CQ408 更年期障害への対応は?
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf
漢方医学から見た更年期障害
一方、漢方医学では、更年期の不調を身体全体のバランスの乱れとして捉えます。
漢方では、私たちの身体は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という3つの要素で構成されていると考えます。これらが体内をスムーズに巡り、バランスが取れている状態が「健康」です。
- 気(き): 生命活動の根源となるエネルギー。身体を温め、内臓の働きを活発にするなど、目に見えない機能的な側面を指します。
- 血(けつ): 全身に栄養を運び、潤いを与える物質。西洋医学の血液に近いですが、ホルモンなど栄養素も含むより広い概念です。
- 水(すい): 血液以外の体液全般。身体を潤し、冷却する役割があります。
更年期は、この「気・血・水」のバランスが大きく崩れやすい時期です。ホルモンバランスの乱れや加齢、ストレスなどが引き金となり、それぞれの要素が不足したり(虚)、流れが滞ったり(滞)することで、さまざまな不調が現れるのです。
漢方治療は、個々の症状を叩くのではなく、この「気・血・水」のどこに不調和が生じているのかを見極め、身体全体のバランスを根本から整えることを目的としています。だからこそ、一人ひとり症状が異なる複雑な更年期障害に対して、優れた効果を発揮するのです。
漢方薬を選ぶための最重要ポイント「証」とは?

「自分に合う漢方薬はどうやって選べばいいの?」
その答えの鍵を握るのが、漢方独自のものさしである「証(しょう)」です。
「証」とは、簡単に言えば「その人の体質や状態」のこと。漢方では、同じ症状でも、その人の「証」に合わない薬を飲んでも効果は期待できません。
「証」を見極めるための重要な指標の一つに、「虚実(きょじつ)」があります。これは、その人の体力や抵抗力の充実度を示すものです。
- 実証(じっしょう): 体力や抵抗力が充実しているタイプ。
- 体格ががっちりしている
- 声に張りがあり、赤ら顔
- 便秘気味
- 病気への反応が強く、症状が急激に現れやすい
- 虚証(きょしょう): 体力や抵抗力が低下しているタイプ。
- 体格が華奢で、疲れやすい
- 声が小さく、顔色が青白い
- 胃腸が弱く、下痢をしやすい
- 症状が慢性的にだらだらと続くことが多い
- 中間証(ちゅうかんしょう): 実証と虚証の中間に位置するタイプ。
更年期障害でよく使われる漢方薬は、この「虚実」を大きな目安として使い分けられます。
漢方薬を選ぶときは、「どんな症状があるか」だけでなく、「どんな体質(証)の人が、その症状を呈しているか」という視点が非常に重要になります。これからご紹介する漢方薬も、ぜひご自身の体質と照らし合わせながら読み進めてみてください。
【体質別】更年期障害に用いられる三大漢方薬

それでは、具体的にどのような漢方薬が使われるのか見ていきましょう。
更年期障害の治療では、特に「婦人科三大処方」と呼ばれる3つの漢方薬が中心的な役割を果たします。これらは、更年期に現れやすい代表的な3つの体質(証)に対応しています。
① 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力がなく、冷えやむくみが気になる方に
こんな方におすすめ
- 体力がなく、疲れやすい(虚証)
- 手足や腰が冷えやすい
- めまいや立ちくらみがする
- 夕方になると足がむくむ
- 貧血気味で顔色が悪い
- 頭が重い感じがする
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、体力がなく、繊細で疲れやすい「虚証」タイプの女性のための代表的な処方です。
漢方医学的には、「血(けつ)」が不足した「血虚(けっきょ)」と、「水(すい)」の流れが滞った「水滞(すいたい)」の状態を同時に改善することを目的としています。
「血」を補い、その巡りを良くすることで、貧血や疲労感を改善します(補血活血)。同時に、体内に溜まった余分な水分の排出を促し(利水)、むくみやめまい、頭重感といった水分代謝の異常による症状を和らげます。
身体に必要な栄養と潤いを補給しながら、不要な水分は排出する。この絶妙なバランスで、弱った身体を内側から優しく整えてくれるのが当帰芍薬散です。
② 加味逍遙散(かみしょうようさん):ストレスが多く、心身の不調が多彩な方に
こんな方におすすめ
- イライラしたり、急に不安になったり、感情の起伏が激しい
- のぼせやほてり(ホットフラッシュ)、発汗がある
- 肩こり、頭痛、疲労感など、症状が日によって変わる(不定愁訴)
- 眠りが浅い、または寝つきが悪い
- ストレスを感じやすい
- 体力は普通〜やや虚弱(虚証〜中間証)
加味逍遙散(かみしょうようさん)は、婦人科領域で最も頻繁に用いられる処方の一つで、その適応範囲の広さが特徴です。更年期障害に見られる非常に多くの症状に対応できるため、しばしば第一選択薬として考慮されます。
処方名の「逍遙」という言葉が「症状があちこち移り変わる」ことを意味するように、訴えが一定しない不定愁訴に特に適しています。
漢方医学的には、ストレスなどによって「気」の流れが滞った「気滞(きたい)」、栄養が不足した「血虚(けっきょ)」、そしてそれらから生じる「熱」という、3つの複雑な病態を同時に改善します。
まず、滞った「気」の流れをスムーズにして、イライラや精神的な緊張を和らげます。次に、不足した「血」を補って精神を安定させ、さらに気の滞りによって生じた余分な「熱」を冷ますことで、のぼせやほてりを鎮めます。
心と身体の両面に働きかけ、複雑に絡み合った不調の糸を解きほぐしてくれるのが加味逍遙散です。
③ 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):体力はあり、のぼせるのに足は冷える方に
こんな方におすすめ
- 顔や上半身はカッと熱くなるのに、足先は冷たい(冷えのぼせ)
- 比較的体力はある方だ(中間証〜実証)
- 肩こりや頭痛、めまいがする
- 月経痛が重い、または月経不順がある
- シミやあざができやすい
- 下腹部を押すと抵抗感や痛みがある
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、血行障害、すなわち「瘀血(おけつ)」を改善することに特化した代表的な処方です。
「瘀血」とは、血液の流れが滞ってドロドロになった状態のこと。この処方のキーワードは、まさに瘀血の典型的なサインである「冷えのぼせ」です。
血行が悪いために熱が上半身に偏ってしまい、顔はのぼせるのに下半身は冷える、という矛盾した状態が起こります。桂枝茯苓丸は、滞った血液の流れを強力に促進し(活血化瘀)、全身の血流を改善します。
これにより、上半身に偏った熱を全身に分散させ、つらい冷えのぼせを解消するとともに、血行不良が原因で起こる肩こりや頭痛、月経痛などの痛みも和らげます。
三大処方の選び方まとめ
| 当帰芍薬散 | 加味逍遙散 | 桂枝茯苓丸 | |
| 体力の目安 | 虚弱(虚証) | 虚弱〜普通(虚証〜中間証) | 普通〜充実(中間証〜実証) |
| キーワード | 冷え、むくみ、疲労、貧血 | イライラ、不安、不定愁訴 | 冷えのぼせ、血行不良、痛み |
| 漢方的な体質 | 血虚・水滞 | 気滞・血虚 | 瘀血 |
| 主な症状 | めまい、立ちくらみ、頭重、肩こり、むくみ | 精神不安、イライラ、ほてり、発汗、不眠、肩こり | のぼせ、足冷え、頭痛、めまい、肩こり、月経痛 |
【お悩み別】更年期の症状に効果的なその他の漢方薬

婦人科三大処方は多くの症状をカバーしますが、特定の症状が特に強い場合や、体質が典型的なパターンに当てはまらない場合には、他の漢方薬がより適していることもあります。
ここでは、代表的なお悩み別に、選択肢となる漢方薬をご紹介します。
ほてり・のぼせ・発汗が特に辛い方へ
ホットフラッシュは更年期の代表的な症状ですが、その原因によって使う漢方薬も異なります。
- 女神散(にょしんさん): のぼせやめまいが主症状で、不安感が強く自律神経が不安定な方に。加味逍遙散が効きにくい場合にも使われます。
- 温清飲(うんせいいん): のぼせやほてりと同時に、皮膚が乾燥してカサカサする方に。血を補い潤す作用と、熱を冷ます作用を併せ持ちます。
- 知柏地黄丸(ちばくじおうがん): 身体を潤す体液が極度に不足し、激しいホットフラッシュ、手足のほてり、口の渇き、寝汗が顕著な方に。
- 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう): 冷えのぼせがあるものの、体力がなく(虚証)、不安感や不眠、動悸など精神症状が強い方に。
イライラ・不安・不眠など精神症状が特に辛い方へ
心の不調は、生活の質を大きく損ないます。漢方薬は、心と身体のつながりを重視し、精神症状を身体のバランスの乱れとして捉え、改善します。
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう): 不安感や抑うつ感があり、特に喉に何かが詰まったような違和感(梅核気)がある場合に第一選択となります。
- 加味帰脾湯(かみきひとう): 思い悩みすぎて精神的に疲労し、顔色が悪く、眠りが浅い方に。気と血を補い、心を穏やかにします。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう): 比較的体力があり、不安感や恐怖感、動悸、パニック、不眠など、より強い精神症状がある方に。
- 抑肝散(よくかんさん): とにかくイライラする、怒りっぽい、興奮しやすい、歯ぎしりや食いしばりがある、といった場合に。「肝」の高ぶりを鎮め、過敏になった神経を和らげます。
とにかく疲れやすい・気力が出ない方へ
「何もやる気が起きない」「朝から身体がだるい」といった極度の疲労感は、生命エネルギーである「気」が不足した「気虚」が原因と考えられます。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 「気虚」を改善する代表的な処方。元気がない、疲れやすいといった症状に加え、食欲不振や胃腸機能の低下を伴う場合に適しています。
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう): 病後などで消耗が激しく、「気」と「血」の両方が著しく不足した状態に。より深刻な虚弱状態に用いられます。
頭痛・めまい・肩こりが辛い方へ
これらの症状は、「血」や「水」の異常と深く関連しています。
- 釣藤散(ちょうとうさん): 慢性的な頭痛やめまいに。特に朝方に症状が強く、高血圧傾向や肩こりを伴う中年以降の方に適しています。
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう): 上半身に水分が滞ることで起こる、立ちくらみのようなめまい、動悸、頭痛に効果的です。
- 五苓散(ごれいさん): 水分代謝の異常を改善する代表的な処方。口の渇きや尿量の異常を伴う頭痛、めまい、むくみなどに幅広く用いられます。
更年期の漢方薬に関するよくあるご質問

漢方薬を始めるにあたって、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。
Q1. 市販薬と病院で処方される薬の違いは?
漢方薬は、薬局やドラッグストアで購入できる「一般用医薬品(OTC)」と、医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」があります。
一番の大きな違いは、有効成分である生薬エキスの配合量です。
- 医療用医薬品: 漢方の古典に定められた基準量(満量処方)が配合されていることが多く、より高い効果が期待できます。原則として健康保険が適用されるため、自己負担額が比較的少なく済みます。
- 一般用医薬品(OTC): 安全性を考慮し、医療用に比べて成分量が少なく調整されている場合(例:2/3量、1/2量)が多いです。処方箋なしで手軽に購入できますが、全額自己負担となります。
更年期障害のように、ある程度の期間、継続して服用する場合は、医師の診断のもと、保険適用で効果の高い医療用医薬品を使用するのが合理的と言えるでしょう。
Q2. 漢方薬に副作用はありますか?
「漢方薬は自然由来だから安全」というイメージがあるかもしれませんが、医薬品である以上、副作用のリスクはゼロではありません。
最も多いのは、胃もたれや食欲不振、下痢といった消化器症状や、発疹、かゆみなどの皮膚症状です。これらは服用を中止すれば改善することがほとんどです。
まれではありますが、注意すべき重篤な副作用もあります。
- 偽アルドステロン症: 甘草(カンゾウ)という生薬の過剰摂取で起こることがあります。血圧上昇、むくみ、手足の脱力感などが現れます。
- 肝機能障害: 全身の倦怠感、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが現れます。
何かいつもと違う症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
Q3. どのくらい飲み続けたら効果が出ますか?
効果の現れ方には個人差がありますが、更年期障害のような慢性的な症状に対しては、体質そのものを改善していくため、効果を実感するまでに通常2週間から1ヶ月程度の期間を要することが多いです。
まずは1ヶ月を目安に服用を続けてみましょう。もし1ヶ月以上服用しても症状に全く変化が見られない場合は、処方が体質に合っていない可能性が考えられます。その際は、自己判断で続けずに、処方した医師や薬剤師に相談してください。
Q4. 病院に行くべきタイミングは?
更年期の症状が非常につらい場合や、これって更年期のせいかしら?と判断に悩む場合は、まず第一に病院を受診してみることをお勧めします。症状によってはホルモン補充療法(HRT)で改善する場合もありますし、甲状腺疾患やうつ病など更年期障害以外の原因が隠れている場合もあります。
まとめ:自分に合った漢方薬で、更年期を穏やかに乗り越えましょう

今回は、更年期障害に対する漢方薬の選び方について、特に「婦人科三大処方」を中心に解説しました。
- 当帰芍薬散: 体力がなく、冷えやむくみが気になる「虚弱・冷え・むくみ」タイプの方に。
- 加味逍遙散: ストレスが多く、多彩な心身の不調に悩む「ストレス・不定愁訴」タイプの方に。
- 桂枝茯苓丸: 体力はあり、のぼせるのに足は冷える「血行不良・のぼせ」タイプの方に。
漢方治療の最大の特長は、一人ひとりの体質や症状の全体像を見極め、最適な処方を選ぶ「個別化医療(オーダーメイド治療)」である点です。
更年期は、多くの女性が通る道です。しかし、その時期をどう過ごすかは、あなた次第です。つらい症状を「年齢のせいだから」と我慢する必要はありません。
市販薬を手軽に試すことも一つの方法ですが、症状が長引いたり、どの薬を選んでいいか分からなかったりする場合は、ぜひ漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみてください。専門家による正確な診断は、安全かつ効果的な治療への一番の近道です。
自分にぴったりの漢方薬を見つけて、心穏やかな毎日を取り戻し、この先の人生をより健やかに楽しんでいきましょう。




