夏の食中毒で下痢止めを使ってはいけないケースは?感染性下痢の見分け方と対処法を薬剤師が解説

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夏に外食やバーベキューを楽しんだあと、急に下痢や腹痛が起こることがあります。

「これから仕事なので、下痢止めを飲んで出かけたい」

「食中毒のときは、下痢を止めない方がよいと聞いたことがある」

「整腸剤や正露丸なら飲んでもよいのだろうか」

このように、市販薬を使うべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

食べ過ぎや冷え、ストレスなどによる一時的な下痢では、市販の下痢止めが選択肢になることがあります。一方、細菌やウイルスによる食中毒、感染性胃腸炎が疑われる場合は、下痢止めを自己判断で使用しない方がよいケースがあります。

とくに、血便、高熱、強い腹痛、繰り返す嘔吐などがある場合は注意が必要です。下痢だけを止めようとせず、水分と電解質の補給を優先し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

この記事では、夏の食中毒で下痢止めを使ってはいけないケース、感染性下痢の見分け方、自宅での対処法、受診の目安について解説します。

目次

夏の食中毒で下痢止めを使ってはいけないケース

下痢はつらい症状ですが、原因によっては市販薬で無理に止めることが適切でない場合があります。

次の症状や状況に当てはまる場合は、下痢止めを自己判断で使わず、医師や薬剤師へ相談してください。

  • 便に血液が混じっている
  • 38℃以上の発熱がある
  • 我慢しにくいほどの強い腹痛がある
  • 水のような便が何度も出ている
  • 吐き気や嘔吐が続いている
  • 同じ食事をした人にも似た症状がある
  • 加熱が不十分な肉や魚介類を食べた
  • 抗菌薬を飲んでいる、または最近まで飲んでいた
  • 乳幼児、高齢者、妊娠中の方に症状が出ている
  • 持病がある、または免疫機能が低下している

症状だけで食中毒の原因を判断することは困難です。ただし、血便、高熱、強い腹痛などは、細菌によって腸に炎症が起きている可能性を考えるサインになります。

血便があるとき

便に赤い血が混じっている場合や、血液と粘液が混じったような便が出ている場合は、下痢止めを飲んで様子を見ないでください。

血便を伴う感染症として注意したいものの一つが、腸管出血性大腸菌による食中毒です。腸管出血性大腸菌に感染すると、水のような下痢から始まり、激しい腹痛や著しい血便へ進むことがあります。

一部では、溶血性尿毒症症候群と呼ばれる重い合併症を起こすこともあります。とくに子どもや高齢者では重症化する可能性があるため、激しい腹痛と血便がある場合は早めの受診が必要です。

便全体が黒く、タールのように見える場合も、消化管から出血している可能性があります。食中毒とは限りませんが、自己判断で下痢止めを使用せず、医療機関へ相談しましょう。

高熱や強い腹痛があるとき

発熱や腹痛は、感染性胃腸炎でもみられる症状です。なかでも38℃以上の発熱、何度も繰り返す水様便、血便、強い腹痛が組み合わさっている場合は、細菌性の感染症を考える必要があります。

たとえばサルモネラ感染症では、吐き気や嘔吐に続いて腹痛と下痢が起こり、重症例では高熱や頻回の水様便、血便がみられることがあります。

腹痛が非常に強い、時間の経過とともに悪化している、お腹を触ると硬く感じるという場合は、食中毒以外の病気も否定できません。市販薬で症状を抑えようとせず、早めに受診してください。

嘔吐が続いて水分を取れないとき

下痢と嘔吐が同時に起こると、短時間でも脱水が進むことがあります。

飲んだ水分をすぐ吐いてしまう、口の中が乾いている、尿量が減っている、立ち上がるとふらつくといった症状がある場合は、下痢止めよりも脱水への対応が優先です。

意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が鈍い、半日ほど尿が出ていない場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

抗菌薬を飲んだあとに下痢が出たとき

抗菌薬を飲んでいる途中や、飲み終わって間もない時期に下痢が出た場合も注意が必要です。

抗菌薬によって腸内細菌のバランスが崩れると、抗菌薬関連下痢症が起こることがあります。なかにはクロストリディオイデス・ディフィシルという菌が増え、大腸に強い炎症を起こすケースもあります。

医療用ロペラミドの電子添文では、抗菌薬の使用に伴う偽膜性大腸炎の患者には投与しないこととされています。下痢止めによって腸の内容物が排出されにくくなり、症状に影響するおそれがあるためです。

抗菌薬を飲んだあとに頻回の下痢、発熱、腹痛、血便が出た場合は、処方した医療機関へ連絡しましょう。残っている抗菌薬や別の薬を自己判断で追加することも避けてください。

子どもには大人用の下痢止めを使わない

子どもは成人より体内の水分量が変化しやすく、下痢や嘔吐によって脱水が進みやすい傾向があります。

家にある大人用の下痢止めを、量だけ減らして飲ませることはできません。医薬品ごとに対象年齢や使用上の注意が異なるため、必ず製品の説明書を確認する必要があります。

医療用ロペラミドでは、低出生体重児、新生児、生後6か月未満の乳児には投与しないこととされています。また、生後6か月以上2歳未満の乳幼児についても、治療上やむを得ない場合を除いて投与しないとされています。

また市販のロペラミド配合薬においても、15歳未満の小児には使用はできません。

子どもがぐったりしている、泣いても涙が出ない、口の中が乾いている、尿が長時間出ていない、血便や強い腹痛がある場合は、早めに小児科へ相談してください。

なぜ感染性下痢を止めてはいけないのか

食中毒や感染性胃腸炎による下痢は、腸に入った病原体や病原体が作る物質を体外へ出そうとする反応の一つです。

下痢止めのなかには、腸の動きを抑えて便が通過する速度を遅くするものがあります。感染性下痢でこのような薬を使用すると、病原体や原因物質が腸の中にとどまる時間が長くなり、回復が遅れる可能性があります。

下痢は病原体や原因物質を排出する反応

下痢が起こると、腸管内の水分量が増え、便が通常より速く排出されます。日常生活には大きな負担となる症状ですが、感染性胃腸炎では体を守るための反応として働いている面があります。

そのため、「下痢の回数を減らせば病気も治る」とは限りません。

下痢止めは、あくまで下痢という症状を一時的に抑える薬です。原因となる細菌やウイルスそのものを取り除く薬ではありません。

感染性腸炎の治療では、脱水を防ぐための水分・電解質補給など、全身状態を保つための対症療法が基本になります。日本大腸肛門病学会は、感染性腸炎について以下のように述べています。

下痢止めや鎮痙薬は、腸管内容物の停滞時間を延長し、毒素の吸収を助長する可能性があり原則的には使用しません。
https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=4


厚生労働省は、ノロウイルスに関するQ&Aで以下のように述べています。

止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

「原因や患者の状態を確認しながら~」でなく、出典を明確に示して、もう少し強めに警告する方が良いと思います。

腸の動きを抑えると回復が遅れることがある

ロペラミドは、腸管の運動を抑えることで便が腸を通過する時間を遅くし、その結果として腸内での水分吸収が促される成分です。感染が原因ではない下痢などに使われることがあります。

一方、感染性下痢が疑われる患者について、医療用ロペラミドの電子添文では、治療上やむを得ない場合を除いて投与しないこととされています。治療期間が延びるおそれがあるためです。

さらに、腸管出血性大腸菌などによる出血性大腸炎や、抗菌薬の使用に伴う偽膜性大腸炎は禁忌とされています。

市販の下痢止めは、製品によって配合成分や作用が異なります。商品名だけで判断せず、発熱、血便、強い腹痛、嘔吐などがあるときは、服用前に医師または薬剤師へ相談してください。

一般的な下痢と感染性下痢の見分け方

下痢の原因は、食中毒や感染性胃腸炎だけではありません。食べ過ぎ、冷たい物の取り過ぎ、アルコール、薬の副作用、ストレス、過敏性腸症候群など、さまざまな原因があります。

症状だけで原因を確定することはできませんが、受診や薬の使用を判断するための手がかりはあります。

感染性下痢を疑うチェックポイント

次の項目が複数当てはまる場合は、感染性下痢の可能性を考えます。

  • それまで問題がなかったのに急に発症した
  • 水のような便が何度も出る
  • 発熱、悪寒、だるさがある
  • 吐き気や嘔吐がある
  • 強い腹痛がある
  • 便に血液や粘液が混じっている
  • 同じ料理を食べた人も下痢や嘔吐を起こしている
  • 加熱不十分な鶏肉、ひき肉、生ものを食べた
  • バーベキューや持ち寄り料理のあとに発症した
  • 海外旅行中または帰国後に発症した

食中毒は、食べた直後に発症するとは限りません。原因によっては数日経過してから症状が現れます。

直前の食事だけでなく、発症前の数日から1週間程度に食べたものを振り返ることが大切です。

ストレスや機能性の下痢を考えやすい特徴

緊張すると腹痛や下痢が起こる、通勤や会議の前に便意が強くなる、症状を数か月にわたって繰り返している場合は、過敏性腸症候群などの機能性疾患が関係していることがあります。

過敏性腸症候群では、腹痛と便通異常が繰り返し起こり、排便すると腹痛が軽くなることがあります。

ただし、血便、発熱、意図しない体重減少は、過敏性腸症候群以外の病気を疑う警告症状です。「ストレスのせいだろう」と決めつけず、医療機関で相談しましょう。(日本消化器病学会)

また、感染性下痢でも発熱が目立たないことがあります。発熱がないという理由だけで、食中毒を否定することはできません。

夏に注意したい食中毒の原因と症状

夏場は気温と湿度が高く、食品中で細菌が増殖しやすくなります。加熱が不十分な料理や、常温で長く置かれた食品には注意が必要です。

主な原因原因になりやすい食品や場面発症までの目安主な症状
カンピロバクター生または加熱不十分な鶏肉、鶏のたたき、調理器具からの二次汚染1~7日程度下痢、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐。血便を伴うこともある
サルモネラ卵、食肉、加熱不十分な料理、調理器具からの二次汚染8~48時間程度。ただし数日後のこともある吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱。重症例では血便
腸管出血性大腸菌加熱不十分な牛肉やひき肉、汚染された野菜や水3~8日程度水様便、激しい腹痛、血便。重い合併症を起こすことがある
腸炎ビブリオ生の魚介類、刺身、魚介類からの二次汚染12時間前後が目安強い腹痛、水様便、吐き気、嘔吐、発熱
ノロウイルス二枚貝、感染した人が調理した食品、手指や吐物からの感染24~48時間程度吐き気、嘔吐、下痢、腹痛。発熱は軽いことが多い

原因ごとに典型的な傾向はありますが、実際の症状には個人差があります。症状だけで原因菌を特定することはできません。

カンピロバクターは、食べてから症状が出るまでの期間が比較的長いことが特徴です。「鶏肉を食べた翌日は元気だったから関係ない」とは言い切れません。下痢や腹痛が出る前の1週間程度に、半生の鶏肉を食べていなかったか確認しましょう。

また、カンピロバクター感染後、数週間してからまれにギラン・バレー症候群を発症することがあります。手足に力が入りにくい、しびれなどの症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診してください。症状が進行すると、歩行が難しくなったり、呼吸に必要な筋肉に影響したりすることがあるため、放置しないことが大切です。

腸管出血性大腸菌では、激しい腹痛と血便が重要なサインです。熱があまり高くない場合でも重症化することがあるため、血便があれば受診してください。

なお、ノロウイルスは冬に多い感染症ですが、一年を通して発生します。夏であっても、嘔吐と下痢が急に始まった場合は可能性があります。

感染性下痢が疑われるときの正しい対処法

感染性下痢が疑われるときは、下痢を止めることよりも、脱水を防ぎながら体を休めることが大切です。

自宅では次の順番で対応しましょう。

  1. 水分と電解質を少量ずつ補給する
  2. 安静にして体力の消耗を防ぐ
  3. 食べられる範囲で消化のよい食事を取る
  4. 症状と排便回数を記録する
  5. 危険なサインがあれば医療機関へ相談する

経口補水液を少量ずつ飲む

下痢や嘔吐では、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。そのため、脱水が心配なときは、水やお茶だけでなく経口補水液を利用する方法があります。

吐き気があるときに一度に多く飲むと、嘔吐を誘発することがあります。最初は一口程度から始め、数分おきに少しずつ飲みましょう。

飲んでもすぐに吐いてしまう場合は、10~15分ほど休んでから、スプーン1杯程度の少量で再開します。それでも水分が取れない場合は、点滴が必要になることもあるため、医療機関へ相談してください。

経口補水液は、脱水時の水分・電解質補給に適した組成へ調整された飲料です。ただし、塩分やカリウムなどの摂取制限がある方は、使用前に医師や薬剤師へ確認してください。

食事は無理をせず少量から再開する

吐き気が強いときに、無理に食事を取る必要はありません。水分が取れるようになり、吐き気が落ち着いてきたら、消化しやすいものを少量から再開します。

おかゆ、やわらかく煮たうどん、スープ、バナナなどが選択肢になります。脂肪分が多い食事、香辛料の強い料理、アルコール、カフェインを多く含む飲み物は、症状が落ち着くまで控えた方がよいでしょう。

長期間の絶食は体力低下につながることがあります。食べられる状態になったら、体調を見ながら少しずつ通常の食事へ戻します。

整腸剤は下痢止めとは作用が異なる

整腸剤は、乳酸菌やビフィズス菌などによって腸内環境を整える目的で使用される薬です。腸の動きを強く止めるタイプの下痢止めとは作用が異なります。

感染性胃腸炎のときに整腸剤が使われることはありますが、原因や症状によって適否が変わります。また、整腸剤を飲めば脱水や重症化を防げるわけではありません。

血便、高熱、強い腹痛、繰り返す嘔吐がある場合は、整腸剤だけで様子を見ず、医療機関へ相談してください。

持病の薬を服用している方、妊娠中や授乳中の方、子どもに使用する場合は、購入前に薬剤師へ確認すると安心です。

抗菌薬が必要かどうかは医師が判断する

「細菌による食中毒なら抗菌薬を飲んだ方がよい」と考える方もいるかもしれません。しかし、感染性腸炎のすべてに抗菌薬が必要なわけではありません。

症状が軽く自然に改善する場合もあり、原因となる菌によっては、抗菌薬を使用するか慎重に判断する必要があります。

とくに腸管出血性大腸菌が疑われる場合は、患者の年齢、症状、検査結果などを踏まえた医師の判断が必要です。以前処方された抗菌薬や、家族の薬を自己判断で飲まないでください。

抗菌薬はウイルスには作用しません。ノロウイルスによる感染性胃腸炎では、輸液などの対症療法が中心になります。

家族への感染を防ぐ

感染性胃腸炎が疑われる場合は、本人の体調管理だけでなく、家族へ広げないための対策も必要です。

トイレのあと、便や吐物を処理したあと、調理や食事の前には、石けんと流水で手を洗います。タオルの共用も避けましょう。

便や吐物を片づけるときは、使い捨ての手袋やマスクを着用し、周囲へ広げないよう静かに処理します。ノロウイルスが疑われる場合、アルコール消毒だけでは十分な効果が得られないことがあります。塩素系消毒剤を使用する場合は、製品に表示された使用方法、濃度、換気などの注意事項を守ってください。

症状がある人は、家族の食事を調理することも控えた方がよいでしょう。

こんなときは早めに医療機関へ

軽い下痢だけで水分が取れており、全身状態がよい場合は、自宅で休みながら経過を見られることがあります。

ただし、次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。

当日中の受診を検討したい症状

  • 血便や黒い便が出た
  • 38℃以上の発熱が続く
  • 強い腹痛がある
  • 水様便を何度も繰り返している
  • 嘔吐が続いて食事や水分を取れない
  • 尿量が明らかに減っている
  • 口の中が乾き、強い喉の渇きがある
  • 立ちくらみやふらつきがある
  • 下痢が数日続き、改善する様子がない
  • 同じ食事をした複数人に症状が出ている
  • 海外旅行後に下痢が続いている
  • 抗菌薬を飲んだあとに下痢が始まった

血便や激しい腹痛がある場合は、下痢止めで様子を見ずに受診してください。腸管出血性大腸菌など、早期の診断と経過観察が必要な感染症もあります。

速やかな受診が必要な症状

  • 意識がぼんやりしている
  • 呼びかけへの反応が鈍い
  • 自力で立てないほどぐったりしている
  • 半日ほど尿が出ていない
  • けいれんが起きた
  • 呼吸が荒い
  • 腹痛が急激に悪化している
  • 大量の血便が出ている

夜間や休日であっても、地域の救急相談窓口や医療機関へ連絡してください。

子ども・高齢者・持病がある方は早めに相談する

乳幼児、高齢者、妊娠中の方、糖尿病や腎臓病などの持病がある方、免疫機能が低下している方は、脱水や感染症が重症化しやすいことがあります。

症状が軽く見えても、水分摂取量や尿量が減っている場合は注意してください。

子どもでは、泣いても涙が出ない、目がくぼんでいる、口の中が乾いている、おむつが長時間ぬれていないといった変化が脱水のサインになります。

高齢者は喉の渇きを感じにくいことがあり、本人が「大丈夫」と話していても脱水が進んでいる場合があります。周囲の方が食事量、水分量、尿量、反応の変化を確認しましょう。

受診時に伝えるとよい情報

受診する際は、次の情報を整理しておくと診察に役立ちます。

  • いつから症状が始まったか
  • 1日の下痢や嘔吐の回数
  • 便の色や状態、血液や粘液の有無
  • 最も高かった体温
  • 発症前1週間程度に食べたもの
  • 生肉、半生の肉、魚介類を食べたか
  • 外食、バーベキュー、旅行をしたか
  • 同じ食事をした人に症状があるか
  • 現在使用している薬
  • 最近、抗菌薬を使用したか
  • 持病やアレルギーの有無
  • 水分摂取量と尿の回数

市販薬を飲んだ場合は、商品名や成分がわかる箱、説明書、写真などを持参してください。

夏の食中毒と下痢止めに関するよくある質問

整腸剤なら飲んでもよいですか?

整腸剤は「体調を崩してから慌てて飲むもの」というより、日ごろから腸内環境を整えておく目的で使いやすい製品です。夏場は冷たい飲食物や冷房で、感染とは関係なくおなかの調子を崩しやすい時期でもあります。

市販の整腸剤には、乳酸菌のほか、酪酸菌や糖化菌など複数の菌を組み合わせた製品もあります。たとえば「ビオスリーHi錠」は、酪酸菌・乳酸菌(ラクトミン)・糖化菌の3種類を配合した指定医薬部外品で、効能・効果は「整腸(便通を整える)、便秘、軟便、腹部膨満感」です。5歳以上から服用できます。

ただし、繰り返しになりますが、血便、高熱、強い腹痛、繰り返す嘔吐、脱水症状があるときは、整腸剤で様子を見る段階ではありません。医療機関を受診してください。

正露丸なら食中毒でも飲めますか?

「正露丸」という名称を含む製品には複数の商品があり、メーカーや製品によって成分、効能・効果、使用上の注意が異なります。

商品名だけを見て、感染性下痢でも使用できると判断することはできません。

血便、高熱、強い腹痛、繰り返す嘔吐などがあるときは、正露丸を含めて下痢に使用する薬を自己判断で服用せず、医師や薬剤師へ相談してください。

症状が軽く、市販薬を検討するときも、購入する製品の説明書を確認し、記載された用法・用量を守りましょう。

ロペラミドを含む下痢止めは避けるべきですか?

食中毒や感染性胃腸炎が疑われる場合、ロペラミドを含む薬は自己判断で使わない方がよいケースがあります。

とくに血便、高熱、強い腹痛があるときや、抗菌薬の使用後に下痢が出たときは注意が必要です。

ロペラミドは腸の動きを抑える作用があるため、感染性下痢では病原体や原因物質の排出に影響し、治療期間が延びる可能性があります。医療用ロペラミドの電子添文でも、感染性下痢、出血性大腸炎、抗菌薬に伴う偽膜性大腸炎について注意や禁忌が示されています。

下痢の原因がわからない場合は、服用前に薬剤師へ相談しましょう。

下痢が止まっていれば食中毒ではありませんか?

下痢が一度止まったからといって、食中毒の可能性がなくなったとは限りません。

食中毒の症状は、時間帯や食事、水分摂取の状況によって一時的に軽くなることがあります。また、吐き気、腹痛、発熱、だるさなど、下痢以外の症状が残る場合もあります。

下痢が止まっていても、血便、強い腹痛、高熱、尿量の減少などがある場合は受診してください。

食中毒かもしれないときは何科を受診しますか?

成人であれば、内科や消化器内科が受診先の目安です。子どもは小児科へ相談してください。

激しい腹痛、大量の血便、意識状態の変化、強い脱水症状がある場合は、救急外来の受診を検討します。

複数人に同じ症状が出ている場合は、受診前に医療機関へ電話し、同じ食事をした人にも症状があることを伝えるとよいでしょう。

市販薬で様子を見てよいのはどのような下痢ですか?

発熱や血便、強い腹痛、嘔吐がなく、水分が十分に取れていて、全身状態が良好な一時的な下痢では、市販薬が選択肢になることがあります。

ただし、原因を自己判断することは難しいため、次のような方は購入前に薬剤師へ相談してください。

  • 下痢を繰り返している
  • 持病がある
  • 複数の薬を使用している
  • 妊娠中または授乳中である
  • 子どもや高齢者である
  • 症状が数日続いている
  • 食中毒の可能性が否定できない

市販薬を使用しても症状が改善しない場合や、症状が悪化した場合は、服用を続けず医療機関を受診しましょう。

まとめ

夏の急な下痢では、「早く止めたい」と考えて市販の下痢止めを使いたくなるかもしれません。しかし、食中毒や感染性胃腸炎が疑われる場合は、下痢止めによって病原体や原因物質の排出が遅れ、回復に影響する可能性があります。

とくに、血便、高熱、強い腹痛、頻回の水様便、繰り返す嘔吐、抗菌薬使用後の下痢がある場合は、下痢止めを自己判断で使わないでください。

感染性下痢が疑われるときは、経口補水液などを少量ずつ取り、脱水を防ぐことが大切です。水分を取れない、尿が減っている、ぐったりしている、意識がぼんやりしているといった症状がある場合は、速やかに医療機関へ相談しましょう。

下痢止めや整腸剤は、製品ごとに成分、対象年齢、使用上の注意が異なります。市販薬を使用してよいか迷ったときは、症状や食事内容、使用中の薬を薬剤師へ伝えたうえで相談してください。